電動鼻水吸引器の「ブーン」という音を聞くだけで、大泣きしていたわが子。
「ブーンするよ」と声をかけただけで「やだー!」と泣き、いざ吸おうとすると激しく嫌がっていました。
それが今では、鼻水が垂れてくると自分から、
「ちょっと鼻ブーンして」
と言ってくるようになりました。
鼻水吸引を嫌がらずにできるようになった背景には、本人の集中力を生かした小さな成功体験があったことに気づきました。
今回は、電動鼻水吸引器をとても怖がっていた子に試したことと、わが家では何が克服のきっかけになったのかを書いていきます。
「ブーン」と言うだけで大泣きしていた
わが家には3人の子どもがいますが、電動鼻水吸引器への反応は三人三様でした。
一人は、鼻水を吸われてもまったく泣かず、されるがまま。もう一人は鼻水吸引が好きではないものの、「吸われるなら仕方ない」という様子で受け入れていました。
今回の主人公である子は、3人の中でも飛び抜けて鼻水吸引が苦手でした。
実際に吸う前から、「ブーン」という言葉だけで大泣き。電動鼻水吸引器の大きな音や、これから何をされるのか分からない不安が、とても怖かったのだと思います。
プールを楽しみにしていたので、まずは説明してみた
この子はプールが大好きです。
そこで最初は、
「鼻水が出たままだとプールに入れないから、鼻水を吸ってから行こうよ」
と説明してみました。
保育園の先生にも、「鼻水吸引が本当に苦手なんです」と相談しました。
そして、先生からも本人に、プールに入りたいなら鼻水をきれいにしておこうね、と声をかけてもらいました。
けれど、そのときはあまりうまくいきませんでした。
大人の説明が間違っていたわけではなくても、本人の中が恐怖や不安でいっぱいの間は、理由を理解して受け入れる余裕がなかったのかもしれません。
平気なきょうだいの姿を見せてみた
次に試したのは、鼻水吸引をまったく気にしないきょうだいの姿を、そばで見せることでした。
吸い終わったあとに、
「痛くなかった?」
と聞くと、本人は「痛くなかった」と答えます。
その様子を見せながら、「ほら、大丈夫だよ」「痛くないんだって」と伝えました。身近なきょうだいが平気なら、少しは怖くないと思えるかもしれないと考えたのです。
ただ、これもすぐに決定的な変化にはつながりませんでした。
集中力の高さを逆手に取って「絵本作戦」
そんな中で思いついたのが、絵本を読んでいる間に鼻水を吸う方法でした。
この子はとても集中力が高く、何かに夢中になっているときは、声をかけても聞こえていないことがあります。
それなら、その集中力を逆手に取ってみたらいいのではないかと思いました。
本人が絵本に集中しているときに、
「絵本を読んでいていいから、ちょっと横から吸わせてね」
と声をかけました。
座ったまま、横からそっと電動鼻水吸引器を鼻に当ててみます。
すると案の定、絵本に夢中になっている間は、鼻水吸引への警戒が少し手薄になっていました。
あれほど嫌がっていたのに、吸うことができたのです。

できた瞬間に、思いきり褒めた
無事に鼻水を吸えたとき、私は思いきり褒めました。
「全然大丈夫だったね!」
「痛くなかったでしょう?」
「今度から、絵本を読みながら鼻を吸おうか」
本人も、絵本に集中している間なら、思っていたより平気だったと分かったようでした。
この一回が、「鼻水吸引は怖い」という経験ではなく、「自分にもできた」という経験になったのだと思います。
最初は「絵本を見ながらやる」と自分で準備
一度成功してからも、最初のうちは絵本が必要でした。
私が「鼻を吸おうか」と言うと、本人から、
「じゃあ、絵本を見ながらやるね」
と言って絵本を開きます。読み始めてから、私が横から鼻水を吸うようになりました。
自分で安心できる方法を選び、準備してから挑戦する。そうした経験を何度か重ねるうちに、少しずつ自信がついていったようです。
今では絵本がなくても「鼻ブーンして」
最近では、もう絵本がなくても大丈夫です。
鼻水が垂れてくると、自分で鼻をかむより、吸ってもらうほうが楽だと分かってきたようで、
「ちょっと鼻ブーンして」
と自分から頼んできます。
音は大きいけれど、実際には思っていたほど怖くない。そして、終わったあとは鼻がすっきりする。
大人からそう説明されただけではなく、本人が自分の体験として分かったことが、大きかったのだと思います。
説明やきょうだいのお手本も、あとから意味を持った
最初にした説明や、平気なきょうだいの姿を見せたことは、すぐには効果がないように思えました。
けれど、今振り返ると、まったく意味がなかったわけではありません。
一度「大丈夫だった」という経験をして安心できるようになってから、鼻水を吸う理由についての説明も、本人の中で意味がつながってきたように感じます。
また、この子と、もともと平気だった子の二人が落ち着いて鼻水を吸われるようになると、鼻水吸引が苦手だったもう一人のきょうだいにも変化がありました。
二人が平気そうにしている姿を見るうちに、その子も以前よりずっと受け入れられるようになったのです。
きょうだいのお手本は、その場ですぐに効くとは限りません。それでも、安心できる姿を繰り返し見ることが、あとから助けになる場合もあるのだと感じました。
怖がる子には「安心できる一回」が必要なのかもしれない
今回の経験から、できないことの一番の理由が、恐怖や不安から来ている場合もあるのだと分かりました。
怖さでいっぱいのときに、なぜやったほうがいいのかを説明しても、言葉がうまく届かないことがあります。
わが家の場合は、本人の高い集中力を生かし、絵本を読みながら試したことで、安心して鼻水吸引を経験できました。
その一回を思いきり褒めたことが自信になり、やがて絵本なしでもできるようになりました。
すべての子に絵本が合うとは限りません。夢中になれるものや、安心できる状況も、その子によって違うと思います。
それでも、電動鼻水吸引器を嫌がる子を前にしたとき、「どう説明したら納得するか」だけでなく、「どうしたら安心して一度経験できるか」という見方もできるのかもしれません。
わが家では、そのきっかけが絵本でした。




